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 細菌性髄膜炎

細菌性髄膜炎という病気をご存知ですか。髄膜というのは頭蓋骨内にある大脳、小脳、延髄、脊髄などを中枢神経といいますが、その脳を包んでいる膜のことをいいます。その膜は3層にわかれ、脳側から、軟膜、くも膜、硬膜とよばれます。軟膜とくも膜の間、すなわち、くも膜の内側の空間が、髄液がたまっている場所(髄液腔)です。この場所に、細菌が侵入して発症するのが細菌性髄膜炎です。ほとんどが鼻やのどについた菌が血液内に入り、菌血症となって髄液腔に達して髄膜炎になると考えられています。ウイルスがはいりこむとウイルス性、あるいは無菌性髄膜炎とよばれます。

 髄液に細菌がはいると、極めてうすい軟膜で脳に接するのですから当然、脳に大きな影響が出てきます。症状としては発熱ですが、赤ちゃんでは低体温になることもあります。呼びかけに答えないというように意識状態が低下したり、痙攣をおこしたりもします。赤ちゃんでしたら不機嫌、ミルクを吐く、ぐったりして泣きもしない、息苦しそうといったこともあります。少し大きなお子さんでしたら頭痛や首を動かせないといったこともあります。

 医療の進歩や保健環境の整備に伴って新生児や免疫不全患者を除けば感染症でなくなるような小児は極めて少なくなりました。しかし、決して感染症自体が減少しているわけではありません。ここ数年、当院がある北海道上川支庁管内では細菌性髄膜炎で入院する小児が増加しています。上川支庁には細菌性髄膜炎の児の入院が可能な病院は8施設ありますが、そのうちの6施設の協力を得て、1988年から2002年までの15年間の細菌性髄膜炎の症例を調査しました。15年間を前期(1988〜1992年)、中期(1993〜1997年)、後期(1998〜2002年)の3期にわけ、それぞれ1990年、1995年、2000年の国勢調査を基にして、5年間での人口10万人あたりの罹患率を算定し、その値を5で割った数字を年間の細菌性髄膜炎の発生率としました。この数字は上川支庁では、1年間に10万人のお子さんの中で細菌性髄膜炎にかかってしまう人数を示しています。

 上川支庁の6つの病院に15年間で34名の細菌性髄膜炎が入院されていました。患者さんの年齢は出生0日の新生児から5歳までで、1歳にならない赤ちゃんが14名と最も多く、5歳を越えるお子さんは5名でした。細菌性髄膜炎の原因となった細菌はインフルエンザ菌(冬に流行するインフルエンザはウイルスであり、全く違うものです)が21名と最も多く、次いで肺炎球菌が 5名、B群溶連菌が 3名でした。
 残念ながらなくなられたお子さんが2人いました。6名に難聴や下肢の麻痺など後遺症が残りました。

 発症率ですが、5歳未満のお子さんの発生率は前期5.1、中期7.5、後期11.5、5〜9歳では前期0、中期0.7、後期3.3といずれも増加していました。すべてをあわせると、前期2.3、中期3.9、後期 7.2でした。

 髄膜炎になってしまうと治療は抗生物質を、肺炎の治療に使う量の2〜4倍使います。それでも、100%後遺症なく回復するということは極めて困難です。欧米ではインフルエンザ菌ワクチン、肺炎球菌ワクチンがあり、三種混合ワクチンなどと同様に、赤ちゃんに接種して髄膜炎を予防しようとしています。その結果、従来の髄膜炎の発症率が10分の1以下に激減しています。我が国では、まだ実用化されていません。インフルエンザ菌ワクチンは2005年以降に実用化される予定ですが、肺炎球菌ワクチンはこれから臨床試験が始まりますので、まだまだ先の話です。











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