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 なおりづらいかぜ?

 ぜーぜーする呼吸がくりかえす、痰がらみの咳がしつこい、粘り気のある鼻水が止まらない、中耳炎がなおらないといったことで小児科を受診されるお子さん達がふえてきています。しかも、お母さんがたは、小児科や耳鼻咽喉科で診察をうけて、薬もちゃんとのませていたのによくならないと訴えられることが少なくありません。このようなお子さんには、年齢は生後6か月くらいから4歳で、保育園や幼稚園に通園し、兄弟姉妹も同じような症状である、などといった共通点が見受けられます。
 このようなお子さんたちがふえている原因の一つに肺炎・気管支炎や中耳炎をひきおこす細菌が、これまで一般に使われていた抗生物質にききずらくなってきていること(耐性化)があげられています。こどもたちがかかる肺炎・気管支炎や中耳炎の90%はウイルス性で、抗生物質は本来効果がありません。残り10%程度が細菌性で、なおすためにその細菌に効果がある抗生物質が必要となります。こどもたちに肺炎や中耳炎をおこす細菌の代表が肺炎球菌とインフルエンザ菌です。その中で従来の抗生物質がききずらくなった菌をペニシリン耐性肺炎球菌、ベータラクタマーゼ非産生性アンピシリン耐性インフルエンザ菌といい、それぞれ略語でPRSP、BLNARと表します。地域によっても異なりますがPRSPは肺炎球菌全体のの50から70%、BLNARはインフルエンザ菌全体の10から30%と考えられています。当院での最近の状況はグラフにしめしました。



 肺炎球菌については耐性の程度によって、軽度と高度にわけましたが、小さいお子さんに高度耐性化した菌の割合が高くなっています。インフルエンザ菌についてはふるくから知られていた耐性菌ベータラクタマーゼ産生性アンピシリン耐性インフルエンザ菌というのがありますので、分類をわけました。インフルエンザ菌では各年齢でほぼ10%程度の割合でした。
 PRSPやBLNARなどの耐性菌の増加の理由として、“多少のダメージは与えるが、死滅させることはできない程度の抗生物質の濃度”に細菌がさらされると、抗生物質の標的である遺伝子が容易に変化が生じ、それが繰り返されることによって耐性レベルが次第に上昇すると考えられています。つまり、あまり効果がない抗生物質を長く続けると、それだけ耐性菌が生み出されるということです。
 1990 年代によく小児科で使用されていた抗生物質にはケフラール、セフゾン、バナン、トミロンなどがありますが、PRSPやBLNARはこれらの抗生物質の有効性が低下してきています。ですから、このような抗生物質を投与されていてもちっとも良くならないということが起こってきます。PRSP にはファロム、メイアクト、フロモックス、サワシリン、BLNARにはメイアクト、フロモックスが先にあげたケフラールなどより有効性が高い薬剤です。ではケフラールなどは、全くきかない薬なのかというとそうではなく、耐性化していない菌には有効なのです。ただ、難しいのは症状や診察だけで細菌性なのかウイルス性なのか、細菌ならば耐性菌によるものかどうかは全くわかりません。明らかにするためには細菌検査や血液検査が必要になります。最初に列挙した症状があり、長引いているお子さんは検査をうけて、耐性菌が原因であれば、より有効性が期待できる抗生物質を使用していくことになります。ただ、先にあげた内服用の抗生物質で100%有効なものはありません。効果が期待される抗生物質を内服してもよくならない時には、抗生物質を注射で投与する方法もやむをえないでしょう。注射だと内服より血液中の薬の濃度が数十倍に達しますので、当然効果がみられます。
 抗生物質を選ぶのは医師の仕事ですが、きちんとのまないとその効果があらわれません。長引く、繰り返す時にはのませ方に問題がある時があります。例えば、熱が下がったらのませないというお母さんがいらっしゃいますが、熱が下がっても気管支炎や中耳炎がなおったわけではないので、抗生物質をやめて数日後にまた発熱するようなことは少なくありません。また、薬の味が悪くてこどもがのまないという方もいらっしゃいます。これも、努力と工夫でのめるようになることがありますので、必要がある状態でしたらあきらめてはいけません。



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